教養としての戦後〈平和論〉

山本昭宏

戦争と平和の語り方は、どのように「更新」が可能か?

定価
1,650円(本体1,500円+税10%)
ISBN
9784781614649
NDC分類
319
発売日
2016年8月5日
製本
ページ数
224ページ
カテゴリー
政治・社会

詳細Detail

  • 内容紹介
  • 目次
「平和」は、なぜ口にするのが気恥ずかしい言葉になったのか。それは「平和」と対になる「戦争」が、記憶の風化に加え、対テロ戦争に象徴されるように内実が変質しているなかで、「平和」という言葉も「戦争」という言葉も、機能不全を起こしているからである。では現在、その語り方をどのように「更新」していくことが可能か。本書はそのヒントを探るために論壇での議論に重点を置きつつも、文学やポピュラー文化にまで視野を広げ、戦後日本「平和論」の正体に迫る。

山本昭宏(やまもと・あきひろ)
1984年奈良県生まれ。京都大学文学部卒。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。日本学術振興会特別研究員を経て、現在、神戸市外国語大学准教授。専攻は日本近現代文化史、歴史社会学。著書に『核エネルギー言説の戦後史1945-1960:「被爆の記憶」と「原子力の夢」』(人文書院)、『核と日本人:ヒロシマ・ゴジラ・フクシマ』(中公新書)がある。
はじめに

あいまいな日本の「平和」
保守と革新
理念としての憲法
戦争の記憶
「生活保守主義」
本書の構成

第一章 「平和」と独立 敗戦・占領から六〇年安保まで

敗戦から憲法制定まで
憲法九条の受容
「平和国家」日本
多様な「平和」
「平和」勢力の拡大
平和問題談話会
再軍備と講和問題
非武装中立とレジスタンスのリアリティ
講和後の改憲論
自衛隊と憲法九条
「平和」運動としての原水爆禁止運動
福田恆存の「平和」
五五年体制
アジアへの期待と国連加盟
スターリン批判とハンガリー事件
日米安全保障条約をめぐる議論と坂本義和
戦争体験の世代差
六〇年安保闘争

第二章 「平和」の分離 一九六〇年~七三年

「平和」の保守化
「現実主義者」高坂正堯の登場
高坂の吉田茂論と宮澤喜一の「安保効用論」
『砂の女』と『個人的な体験』と革新自治体
原水禁運動の分裂から中国の核武装まで
永井陽之助 「平和」のための連帯責任
坂本義和・丸山眞男・小田実による「現実主義」批判
佐藤栄作 「平和国家」の僭称
『昭和残侠伝』と「平和」
ベトナム反戦運動と「平和」の問い直し
「平和」への違和感
鶴見良行の問題提起
『火垂るの墓』の問いかけ
焼跡からの「厭戦」
「非武装中立」の可能性
七〇年安保の自動延長と「暴力」の時代

第三章 「平和」の安寧 一九七三年~八九年

豊かさのなかの「平和」
「平和学」の誕生
『宇宙戦艦ヤマト』
「平和」を叱る人びと
「新中間大衆」の「保身」
盛り上がる改憲論
山口瞳の情念的「平和」論
中曽根康弘と石橋政嗣
消費社会の『火垂るの墓』

第四章 「平和」の消失 一九八九年~

転機としての一九八九年
湾岸戦争の勃発と自衛隊をめぐる議論の開始
自衛隊マンガとしての『沈黙の艦隊』
「一国平和主義」批判と戦争責任
五五年体制と保革対立の終わり
村山富市政権の誕生と社会党の終焉
西部邁と小林よしのり
「心の時代」とインターネット
世界同時多発テロとイラク戦争
格差社会の『火垂るの墓』
「貧困」と「ネット右翼」の社会問題化
東日本大震災と原発問題の政治的争点化
透明のインクで書かれた「平和」
「守る」運動と「リベラル」
偏在する「戦争」
記憶の風化から始める

おわりに

参考文献

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