官邸支配

朝倉秀雄

霞が関をコントロールできる者だけが権力の中枢を握る!
人事、カネ、政策決定権を差配する最強安倍官邸VS霞が関官僚の暗闘。

定価
1,650円(本体1,500円+税10%)
ISBN
9784781614311
発売日
2016年5月16日
製本
ページ数
253ページ
カテゴリー
政治・社会

詳細Detail

  • 内容紹介
  • 目次
憲法改正へひた走る安倍政権の権力構造が今後の日本社会の行方を左右する。
官僚コントロールの成否が政権の浮沈を左右することは、戦後、安定多数を占め続けた自民党政権の鉄則でもあった。敗戦後、焦土と化した国土復興を日米外交を基軸にその礎を築いた吉田茂元総理しかり、歴代最高の人気を誇り、清濁を併せ呑み、未だに待望論の根強い田中角栄元総理の共通項は、旧大蔵官僚が大好きであり、霞が関官僚操作、掌握術の天才であったことだ。
逆に、2009年以降、3年余りに及んだ民主党政権の躓きの最大要因は、誤った政治主導により、国内最大のエリート集団の霞が関官僚にそっぽを向かれたことに起因する。鳩山由紀夫政権による沖縄普天間基地移設問題、菅直人政権による東日本大震災対応の稚拙さとそれに対する失望感が、「安倍一強」自民党政権への回帰となった。
政治主導の端緒となった小泉純一郎政権以降に顕著なのは、「官邸主導」による人事、カネ(予算)、主要政策決定権である。経済財政諮問会議の内実は、官邸による巧妙な霞が関官僚操作であり、それが政権の権力の源泉である。
菅義偉内閣官房長官を中心に、霞が関支配に楔を打ち始める最強安倍官邸の官邸主導の実相を浮き彫りにする。

朝倉秀雄(あさくら・ひでお)
1951年茨城県水戸市に生まれる。中央大学法学部卒業。中央大学白門会司法会計研究所室員、東京都職員、千葉県職員を経て、1995年に国会議員政策秘書となる。衆参8名の国会議員を約17年間に渡って補佐し、委員会の質問原稿の作成、後援会作り、資金管理団体の会計責任者として政治献金の管理等に従事する。国会および永田町の事情に精通し、特に質問原稿作成は100回を超える。主な著書に、『平成闇の権力 政財界事件簿』(イースト新書)、『国会議員リアル白書』、『戦後総理の査定ファイル』、『国会議員裏物語』、『国会議員とカネ』等がある。
はじめに

序章
“官僚支配”打破
に挑む安倍官邸
“官僚支配”打破に挑む安倍官邸
憲法改正の機は熟した
衆愚政治と国会議員の資質の低下
パワー・エリートと劇場型政治
官僚がほくそ笑む“定数削減”
“官僚支配”を生む背景にあるもの
力でねじ伏せる最強官邸

第一章
並び立つ
パワー・エリート
国会議員と官僚
「エリート」と「大衆」
「大衆」の政治的特性
「大衆」と「新党」
「エリート」とメディアに煽動されやすい「大衆」
「大衆社会」におけるテレポリティクスの功罪
政府はどこまでテレビ局に介在できるのか? ─ 高市早苗総務相の答弁の是非
「大衆社会」の到来が「官僚支配」を加速させる
「官邸」と「与党」とに分かれて暗闘する国会議員
「派閥領袖」や「族議員」と官僚の腐れ縁
日本の政治には総理さえ嘴を挟めない「聖域」がある
実務とカネと人事を握る者が組織を支配する
パワー・エリート同士の深夜の攻防─「質問取り」の実態
国会議員の誰もが憧れる予算委員会
ほとんどの国会議員は「予算書」が読めない
まだ訊かれてもいないことを答弁してしまう閣僚の不勉強
官邸主導を妨げてきた「族議員」
行政の肥大化と専門化が官僚依存体質を生む
なぜ「官邸主導」でなければならないのか?
「権力の二重構造」の隙を突く官僚の悪知恵

第二章
暗闘する官邸VS
霞が関官僚
「法制官僚」の抵抗で弱められた首相の権限
罷免された大臣
「官僚支配」のレールを敷いた吉田茂の「政党人嫌い」
官僚の人事は官僚が決める
幹部官僚人事を巡る大臣と事務次官の暗闘
小泉総理に牙を剝いた「道路のドン」こと藤井治芳
拉致問題解決よりも日朝国交回復を優先した田中均元アジア太平洋局長
官僚にシンパシーを感じていた麻生太郎と福田康夫の両政権
自民党が長期政権で身に付けた「官僚」や「抵抗勢力」との共存
安倍総理の消費税増税延期に徹底抗戦した財務官僚
がぜん現実味を帯びてきた消費税増税の再延長
甘利大臣「口利きスキャンダル」は起こるべくして起こった
「政治主導」の政策決定は「議院内閣制」の当然の要請
国会議員の「劣化」が官僚支配を加速させる
官僚は事務次官の顔色を窺いながら仕事をする
「政治主導」は官僚を使いこなすことによって可能になる
官僚支配の象徴─「事務次官等会議」を廃止した鳩山政権
片山善博の「事務次官廃止論」
自分たちの過ちは絶対に認めない官僚気質
税制論議を主導してきた「自民党税制調査会」
「財政規律派」と「リフレ派」の暗闘

第三章
官僚支配の実態
政治家と官僚の能力の差が官僚支配を生む
総理の椅子
政策に強い「官僚派」と調整能力に長けた「党人派」
55年体制の崩壊と小沢一郎
「資格任用」が官僚支配を生む
東大卒の財務官僚が大嫌いな安倍総理
例外的に「政治任用」される「特別職」
事務次官人事に初介入した安倍官邸
各省に君臨する最高権力者
「事務次官等会議」を仕切る「最強の事務方」内閣官房副長官
総理や大臣を翻弄する「霞が関修辞学」
安保法制審議を紛糾させた内閣法制局の憲法解釈
「法の番人」には法的根拠がない
辞めてからも法制局の業務に口出しする「参与会」の悪弊
官僚の書いたシナリオで政治劇を演じるだけの議員と閣僚
官僚に恩を売れば「陳情」を利いてもらいやすくなる
閣僚は官僚の操り人形に過ぎない
「官庁の中の官庁」を自認する財務省
国民主権は「政治主導=官邸主導」を求めている

第四章
橋本・小泉両内閣の
「政治主導」への取組み
「政治主導」で普天間飛行場返還の約束を取り付けた橋本総理
官僚0Bを排斥した「行政改革会議」
「中央省庁再編」への官僚の抵抗
「郵政族」の反撃
「内閣官房」の権限の強化
「永田町の論理」を超越した小泉純一郎の「政治主導」
「格」が上がった「官邸主導」の「要」─菅義偉内閣官房長官
ますます役割が重要になった官房副長官
小泉政権の「総理秘書官」と「総理補佐官」の増員
形骸化した「人事検討会議」にメスを入れる安倍官邸
財務省から予算編成の主導権を奪う
「経済財政諮問会議」による予算編成サイクルの確立

第五章
霞が関を
力でねじ伏せる
「安倍官邸」
小泉路線を踏襲する安倍総理の政治主導
第二次安倍内閣で事前調整機能を失った「次官連絡会議」
安倍官邸の司令塔─「正副官房長官会議」
菅官房長官に睨まれた田中財務次官の戦々恐々
「内閣人事局」発足で強まる幹部官僚人事の官邸色
菅官房長官の鶴の一声でひっくり返った初代内閣人事局長案
失敗に終わった民主党政権の政治主導
官僚支配に楔を打つ「安倍官邸」

おわりに

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