ポップミュージックはリバイバルをくりかえす

柴崎祐二

未来の音は、いつも「過去」にある。
ポップミュージックの「再流行」にせまる画期的なクロニクル。

定価
2,860円(本体2,600円+税10%)
ISBN
9784781622286
JANコード
1920073026006
NDC分類
764
発売日
2023年8月16日
判型
四六判  
製本
ページ数
416ページ
カテゴリー
人文・思想

詳細Detail

  • 内容紹介

フォーク、ロックンロール、レアグルーヴ、渋谷系、ニューエイジ、アフロビート、ドラムンベース、ポップパンク……

新しいムーブメントは過去の音楽のリバイバルとともに生まれる。

あらゆる時代の音楽にアクセス可能となったデジタルストリーミング時代におくる画期的なクロニクル。


【目次】

はじめに


第1章 ブルース:「真正なる黒人音楽」を求めて

ロックの「源泉」としてのブルース

トラッドジャズリバイバル

トラッドジャズブームの社会的性質

トラッドジャズから派生した「スキッフル」

イギリスにブルースを広めたアレクシス・コーナー

ブルースの過去と現在をつないだジョン・メイオール

エリック・クラプトンの革新性

「ブルースロックギタリスト」という新しいヒーロー

「本物」のブルースマンの来英

『キング・オブ・ザ・ブルース・シンガーズ』

若者を魅了する「ここではないどこか」の音楽

消費社会、個人主義社会とブルース

なぜクラプトンは差別発言をしたのか

イギリスのムーブメントに共振したアメリカのバント達

ポール・バターフィールド・ブルース・バンドの衝撃

名ギタリストにして名プロデューサー、ジョニー・ウィンター

マニアなバンド、キャンド・ヒート

拡散するブルースロック

70年代、パブロックなどによって復活するブルース

ニューヒーローの登場とブルース名音源のCD化

「本物志向」と「公共性」によって受け継がれるブルース


第2章 フォークとカントリー:ルーツを呼び覚まし、コミュニティをつなぐ音楽

フォークリバイバルのはじまり

「フォーク」という概念の成立

フォークと左翼運動

フォークをもりあげた政治の季節

フォークリバイバル沸騰

ボブ・ディランの登場

民衆的文化へのシンパシーと自らの出自の矛盾

ボブ・ディランの「擬装」 

「アコースティック」なものの称揚

白人エリート層によるブルースの発見

黒人文化の「純粋性」に託されたもの

1965年、なぜボブ・ディランはブーイングをうけたのか

カントリーとロックの融合

カントリーロックを最初に完成させたアルバム

1968年のルーツミュージック回帰

ルーツ回帰の心性をとく「自己の再帰性プロジェクト」

「よそ者」ゆえにもとめたルーツミュージック――ザ・バンド

憧れの風景をかなでる――クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル

パンク由来の情動を吐き出すオルタナカントリー

様々なルーツミュージックを包括する「アメリカーナ」

「アメリカンゴシック」を象徴するジョニー・キャッシュ

異形の進化系、フリーフォーク

「アシッドフォーク」の再評価

ジョン・フェイヒーのアメリカンプリミティブギター

ルーツ志向の新世代ロック/フォークの充実

コミュニティをつくる音楽


第3章 ロックンロールとオールディーズ:繰り返される「若さ」のサウンド

「1962年の夏、あなたはどこにいましたか?」

エルヴィス・プレスリーの復活

ビートルズのロックンロール回帰

ロックンロールリバイバルコンサートの隆盛

懐古主義的なセットリストを嫌ったリック・ネルソン

異端のドゥーワッププロジェクト、ルーベン・アンド・ザ・ジェッツ

シャ・ナ・ナと「夢のフィフティーズ」

「古き良き1950年代」という発明

イギリスのロックンロール受容

シンプルなサウンドと鮮烈な衣装をまとうグラムロック

「裏方」が仕掛けたグラムロック

素朴なキャンプと意図的なキャンプ

ロックンロール回帰とパンクロックへの予感

『ナゲッツ』の衝撃

「泡沫」バンドの発見

『ペブルズ』と『バック・フロム・ザ・グレイヴ』

パンクロックが内蔵する「過去」

ロックンロールは再び呼び出される


第4章 レアグルーヴとヒップホップ:リスナーによる音楽革命

DJ文化と「過去の読み替え」

現代のクラブカルチャーの祖先としてのモッズ

新しい音楽とファッションに沸くダンスフロア

くりかえすモッズムーヴメント

ノーザンソウルの熱狂

より踊れる、よりレアな7インチレコードを

「踊れるジャズ」の発見

ジャズファンクからハードバップ、ファンキージャズへ

「これはアシッドジャズだ!」

クロスオーバーしていく、アシッドジャズ

歴史主義的、教条主義的なジャズ観をくつがえす

「忘れられたレコード」で踊る

「ディグ」の深化

レアグルーヴ的実践の拡散

あらゆる音源のレアグルーヴ化

ポップミュージック受容の転換点

イギリスへの移民によるブラックミュージック再定義?

ヒップホップの誕生とブレイクビーツ

作り手への冒涜?

2次創作としてのブレイクビーツ

バンバータはなぜ、クラフトワークを引用したのか?

「プラネット・ロック」とアフロフューチャリズム

サンプリングの浸透と音響の前景化

古くて新しい伝統「シグニファイング」

DJカルチャーが映すもの


第5章 ソフトロックとラウンジミュージック:渋谷系の時代と引用と編集の論理

1980年代から1990年代の日本の社会状況と音楽シーン

メインカルチャーへのアンチテーゼとしての「渋谷系」

リスナー文化としての渋谷系と、「世界同時渋谷化」

「ソフトロック」の原義を探る 

日本におけるソフトロック受容

活況を呈すソフトロックのリイシューCD

ソフトロック受容の世代差

「アンチロック」としてのソフトロック

渋谷系の美意識を先取りしていたソフトロック

「フリーソウル」という発明

エキゾチカ、ムードミュージックを取り入れるアーティスト

海外からの吹きつけるラウンジの温風

宇宙時代の独身ふわふわ音楽?

モンドミュージック

HCFDMと傍流ジャンルのリバイバル

都市のコミュニケーション

「アンチ商業主義」へのカウンター? 

渋谷系文化に見る匿名性と差異志向の並立

データベース消費としての2次創作? 

渋谷系の(非)社会性? 

渋谷系の先駆性と、社会への再対峙


第6章 和モノとシティポップ:「踊れる歌謡曲」の発掘と新しいノスタルジア

「和モノ」というコンセプト

大滝詠一の「ゴー!ゴー!ナイアガラ」

近田春夫の「オールナイトニッポン」

「タモリ倶楽部」における「廃盤アワー」

幻の名盤解放同盟

歌謡曲の再評価はなぜ起こったのか

グループサウンズの再発見

ネオGSとガレージパンクリバイバル

発掘される「カルトGS」

和モノDJの興隆

ヒップホップの和モノサンプリング

肉体的な「感情の歌」としての歌謡曲

和モノの歌い手

筒美京平再評価

和モノフリーソウルとしてのシティミュージック再評価

はっぴいえんどをサンプリング

70年代フォーク/フォークロックへのあこがれ

喫茶ロックと和製ソフトロック

各ジャンルを巻き込んで展開する和モノ再評価とアーカイブ化

シティポップブームとは何なのか

シティポップが成立した背景

シティポップのサウンドの特徴

とらえにくいシティポップ

シティポップリバイバルの前史

ヨットロックを「失われたクール」として再評価

先駆的DJ達のシティポップ解釈

クラブミュージック経由のシティポップの実践

ネオシティポップ

ヴェイパーウェイヴ――インターネットアンダーグラウンドとの結合

SNS時代以降のコンバージェンスカルチャー

ノスタルジアは「逃避的」か

二つのノスタルジア

現代のリバイバル現象の根底にあるもの


第7章 ニューエイジとアンビエント:ウェルビーイングとストリーミング時代のリバイバル

ニューエイジミュージックとはなにか

低く評価されてきた音楽

ニューエイジ復権前史

ジャーマンロック再評価

コズミックリバイバル

新たな「バレアリック」解釈

ニューエイジとアンビエントとの違い

ヒプナゴジックポップ

ヒプナゴジックポップからヴェイパーウェイヴへ

レコードマニアとmp3ブログ

レコード再発の活況

モダンニューエイジの勃興

カリフォルニアという磁場

現代ニューエイジの多層的な発展

「アンビエントの民主化」としての現代ニューエイジブーム

もうひとつの「発見」、日本の環境音楽とニューエイジ

環境音楽から「Kankyō Ongaku」へ

リイシューとYouTubeによって加速される環境音楽人気

ニューエイジリバイバルの社会的背景

「カルチュラル・ラグ」が招来したニューエイジブーム?

マインドフルネスの流行

ディープリスニングとマインドフルネス

復権するサウンドスケープの思想

プレイリスト文化の興隆とBGM消費

ムードプレイリスト人気に潜む問題点

ニューエイジと高度資本主義社会の親和性

ニューエイジとカリフォルニアイデオロギー

ハッピークラシーとオリエンタリズム

ニューエイジ/アンビエントリバイバルのゆくえ


第8章 アフリカ音楽:「過去」と「記憶」を蘇らせるグローカルな実践

グローバリゼーション時代のローカル=「グローカル」な音楽

「ワールドミュージック」とはなにか

アフリカ音楽に見るグローカル性

アフリカンポップス「発見」前史

アフリカ音楽への注目から始まった「ワールドミュージック」

ロック/ポップスの中で再解釈されるアフリカ

『グレイスランド』への評価と批判

インディーロックに参照されるアフリカ

デーモン・アルバーンらのアフリカ音楽への接近

エチオピア音楽の「発見」

ヒップ化するエチオジャズ

アフロビートの復権

アフロビートの脱神話化

アメリカの現代ジャズシーンとアフロビート

イギリスにおけるアフリカ音楽文化

アフロビーツとはなにか

米英におけるアフロビーツ

「ワールドミュージック2.0」とはなにか

草の根的なグローカラリゼーションとしてのアフロビーツ

ディコロナイゼーション

「プレワールドミュージック2.0」としてのリイシュー作品

アフロビーツに見る文化的往還

相対化される「過去の復権」の形式

再び主題化するアイデンティティの探求

日本のグローカルミュージックを想像する


終章 拡散するリバイバル

リバイバルの現在形

「BLM」以降のブラックミュージック再発見

『ホワッツ・ゴーイン・オン』と映画『サマー・オブ・ソウル』

「#Me Too」以降のフェミニズムが光を当てる過去の音楽

不遇の先駆者ボビー・ジェントリー

語り直されるフィメールパンクとフィメールラップ

所与的アイデンティティから構築的アイデンティティへ

グラムロックの復権

多元的自己によって引用される過去

ポップパンクのリバイバル

ドラムンベースのモダン化

オンラインメディアによる情報の断片化と「過去」のタグ化

多元的アイデンティティの可能性

継続するアナログレコードブーム

カセットテープとCDの復権

デジタルストリーミング全盛時代における「文脈」の上昇

過去が新しくなるとき


おわりに

主要参考文献

人名索引

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