禅僧が教える 老いと死をたのしむ一句のちから

中野東禅

仏陀、医師、名もなき老人……
人生の黄昏をみつめる100の言葉

定価
1,047円(本体952円+税10%)
ISBN
9784781607177
NDC分類
188
発売日
2011年12月26日
製本
ページ数
237ページ
カテゴリー
人文・思想

詳細Detail

  • 内容紹介
  • 目次
宗教家の立場から、40年以上にわたり人の心のありようを探ってきた筆者。いま自身も老境を迎え、誰もが避けられない「老い」と「死」にいかに臨み、尊厳と充実感をもって人生の最終章を迎えるべきか、印象的な言葉たち=「一句」をもとに考える。本書におさめられた100片の「一句」は、古今東西、仏陀から名もなき一般人のものまで、「老い」と「死」に真摯に向きあって出てきた言葉だからこそ、どれも等しく価値がある。


【著者紹介】

中野東禅 1939年静岡県生まれ。駒沢大学大学院修士課程修了。曹洞宗教化研修所主事、駒沢大学、大正大学、武蔵野大学などの講師を歴任(死生学・生命倫理など担当)。現在、曹洞宗総合研究センター教化研修部門講師。また、特定の宗旨や宗派にとらわれずに仏教を学ぶ集い「南無の会」副総務を務める。「日本死の臨床研究会」「日本生命倫理学会」「日本印度学仏教学会生命問題研究部会委員」などにかかわり、40年以上にわたり、仏教の立場から血や生命倫理について発言してきた。『心を落ち着けるどこでも座禅』(洋泉社)、『人生の問題がすっと解決する名僧の一言』(三笠書房)、『良寛 日本人のこころの言葉』(創元社)など著書多数。
はじめに

一章 老いと死を考える一句
夫婦に後悔がなければ人は死ねます。──あるホスピス医の言葉 
1、死の扉以外の扉はみな閉めることができる。
2、冥土・イン・ジャパン。。 
3、手術は肩書きも何もかもスッ裸にされる。。 
4、死はあるいは泰山よりも重く、あるいは鴻毛よりも軽し。。 
5、死を恐るるに惑いて反って生を忘る。。 
6、老いた夫の看護に「もう限界です」と言う時が来る。。 
7、「この人ガンなんです」と言われ、怖くなって何も言えなかったのです。。
8、老いの方人。。
9、ああままよ 生きても亀の 百分の一。。
10、会者定離 ありとはかねて 聞きしかど 昨日今日とは 思はざりけり。。
11、極楽半分、地獄半分。 
12、暗闇を呪うより、ローソクに火を点けるほうがいい。
13、形見とて 何か残さん 春は花 夏ホトトギス 秋はもみじ葉。 
14、人は仏心の中で生まれ仏心の中に生き仏心の中に息を引き取る。 
15、おまんま食べてうんこ垂れて死ぬことです。
16、腹をたてている体がもう私のものじゃない。
17、人生の春ありたり。
18、患者は死ぬまで成長し続けるのである。
19、老にして学べば死して朽ちず。
20、学ぶことの少ない人は、牛のように老いる。かれの肉は増えるが、
かれの智慧は増えない。

二章 病と老いの一句
ヒビの入った茶碗も大事に使えばもつものだ。──神戸の老婦人の言葉 
1、白髪一本の発見は「老いるショック」だ。 
2、夕映えが美しいように、老人の場所から見た世界は美しいのです。
3、老いが身の 哀れを誰に 語らまし 杖を忘れて 帰る夕暮れ。
4、老いの身は、余命久しからざる事を思ひ、心を用いる事若き時に変わるべし。
心静かに、事少なくて、人に交じはる事もまれならんこそ、
相似合ひてよろしかるべけれ。 
5、老いて妬婦の功を知る。
6、閒中の滋味の最も長きを覚ゆ。
7、卒然と 身の内に立つ 蜃気楼。
8、老後一日も楽しまずして、空しく過ごすはおしむべし。
老後の一日、千金にあたるべし。
9、われは木なり、われは石なり。
10、人のさびは灰身滅智の老境。
11、老いへの対応には回春願望、現役願望、解放願望がある。
12、七十を老という。八十、九十を耄という。 
13、六十にして耳順う。七十にして己の欲するところにしたがいて矩をこえず。
14、病気は病気にまかす。
15、私に供養したかったら病人を看護しなさい。
16、利得のために病人を看護すべからず。
17、かぁちゃんに言わないでくれ。
18、医師の言葉が痛みの在り方を左右する。
19、痛みとは注意力の偏りである。
20、風は清し 月はさやけし いざともに 踊りあかさん 老いの名残に。 

三章 死を学びにする一句
「死」は論理化可能であり、学びの方法はある 
1、昨日まで 人のことだと 思いしに 俺が死ぬとは こいつたまらん。
2、こんなこと大したことじゃない。 
3、両親のためにうろたえないで手術を受けよう。
4、生死を生死にまかす。
5、平気で生きていられることだ。 
6、幼い子供にも家族の葬儀でしっかりお別れをさせなさい。
7、欺かれしも 欺むきしも 盗みしものも 盗まれしものも
そしりしものも そしられしものも するだけの事さえすめば
墓を連ねて横たわる。
8、来ること我が力にあらず、帰らむこと我が志にあらず。
9、「イワシの頭も信心から」でいいじゃないですか。
10、病は院長にまかせて安く、身は兄上にまかせて安く、心は仏にまかせて安し。
11、私は七十年前何ももたずにこの国へきた。
もうじき何ももたずに帰らせていただく。
12、婆死ぬ 嬶死ぬ 倅死ぬ 孫死ぬ。 
13、わしが悪かったー。 
14、家に帰して下さい。子供のために残された時間を使いたいのです。 
15、どんなに呆けたって仏さんの命じゃないですか。 
16、仲のよかった両親が、最後に喧嘩するのは納得できない。 
17、あの世って怖くないんだよ。爺ちゃんがいるから。
18、母さんも、兄ちゃんも、俺も、毎日お前の顔を見るのが嬉しいんだよ。 
19、狼の絵はもう片付けてくれないか。
20、これを車となして因果を運載す。 

四章 死別悲嘆を癒す一句
わし、お前と一緒になれてよかったよ。──ある老人の妻との別れ 
1、ぼくは……じたばたして、虚空を摑んで、死にたくない、死にたくないと叫んで
死ねるようになったよ。 
2、天国がどんな所か知りません。ただ天国へ行ったというだけで十分です。
3、あの世からも祈っているわョ。
4、行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にはあらず。
5、生まれ生まれ生まれ生まれて生の始めに暗く、
死に死に死に死んで死の終わりに冥し。
6、桃栗三年、柿八年、柚は九年で花盛り。
7、おじいちゃん、雨降っている。
8、天地と我と同根、万物と我と一体なり。
9、レット・イット・ビー。
10、失ったものの大きさは、与えられていたものの大きさである。
11、幽霊でも会いたかったのです。 
12、腰掛けた 石を拝んで 遍路たつ。 
13、悲しみは二人で泣けば半分になり、喜びは二人で喜べば倍になる。
14、人は過去を変えることはできないが、その意味を変えることはできる。
15、忘れなさいは残酷だ、せめて自分だけは覚えておいてやりたいのです。 
16、院内学級に亡きお孫さんの名前で色紙を寄付したら。 
17、「なぜだ」と問うことは死んだ人を責めることだから、やめようと思う。
18、死別直後にも、外出や笑いが多い人は、五年後に「うつ」が多い。 
19、桐一葉 日当たりながら 落ちにけり。
20、万事を打ち置いて、唯死に習わるべし。
……誠に死する時、驚かぬようにすべし。

五章 死を生きる一句
君、地獄で生きていけるなァ。──玄沙師備の言葉 
1、人は生きてきたように死ぬ。 
2、決議やデモばやりのこの頃、人間が死ぬのは封建的だと決議し、
そういう人間の運命に対してデモをやったらどうだろうと思う事が時々ある。 
3、死に直面した時、「五つの自我」の混乱がある。 
4、生者必滅の理、口に知って心に知らず。 
5、化粧にこだわる患者。あれじゃ死ねないね。 
6、万事にいろはず、一切を捨離して、孤独独一なるを、死するとはいうなり。 
7、あんなもの効くわけないんです。でも夫が思ってくれるのが嬉しいのです。 
8、死んでから人生を考えてみたらどうでもよかったのである。 
9、命根は寿・煖・識からなりたつ。 
10、チャンスをつかまえる力がなかったら駄目ですな。
11、聖人、死に安んず、賢人、死を分とす、常人、死を畏る。 
12、愛するもののために死んだ故に彼等は幸福であったのでなく、反対に、
彼等は幸福であった故に愛するもののために死ぬる力を有したのである。 
13、死の前で見る世界があなたの行くあの世です。 
14、娘が勧める東京の病院に行ったのは、娘を満足させたかったからです。 
15、独生、独死、独去、独来。 
16、けんかしないでくらそじゃないか末は互いにこの姿。 
17、人生に決着が付くんだ……。 
18、この中に皆まさに塔を起てて供養すべし。 
19、私の「蜘蛛の糸」 
20、すずしさや いのちを聞けり 指のさき。

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